2025/05/27
姿勢を支える縁の下の力持ち「多裂筋」とは?

背中にはたくさんの筋肉がある
「多裂筋(たれつきん)」という筋肉、聞いたことがありますか?
実はこの筋肉、私たちの背中の奥深くにある小さな筋肉群で、普段の生活の中ではあまり意識されることがありません。しかし、この筋肉は私たちが直立歩行を保ち、安定した姿勢を維持するために非常に重要な役割を果たしています。
背中には多くの筋肉があります。大きな筋肉だけでなく、小さな筋肉も無数に存在していて、それらを総称して「脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)」と呼びます。この筋群は、人類が二足歩行を始めた時代から発達してきたもので、背骨をまっすぐ保つために欠かせない存在なのです。
多裂筋とはどんな筋肉?
脊柱起立筋群の中でも「多裂筋」は非常に特徴的な構造を持っています。1本1本が背骨に沿って配置されており、それぞれの椎骨にくっついています。両側から支えるような大きな筋肉とは異なり、背骨の一つひとつを細かく支えるように配置されているのが特徴です。
この筋肉が主に担当しているのは、背骨の「安定化」です。大きな動きを作り出すというよりも、姿勢を微調整したり、横に傾く・ねじるといった繊細な動きをサポートしています。
他の動物との違い
犬や猫などの四足歩行の動物は、短時間なら立ち上がれますが、持続的に二足で立つことはできません。それは、脊柱起立筋群、とくに多裂筋が人間ほど発達していないからです。
一方で、チンパンジーやオランウータンといった類人猿は、人間に近い構造をしており、座った姿勢で背中を立てることができます。これは、多裂筋を含む背中の深層筋がしっかりと機能している証拠です。
傷みやすく、弱りやすい筋肉
多裂筋は直接的に大きな力を出す筋肉ではないため、単独で「鍛える」ことが難しい筋肉です。また、加齢や不良姿勢、あるいは「腰椎すべり症」や「椎間板ヘルニア」などの疾患の影響を受けやすく、固くなったり、動きが悪くなったりしがちです。
例えば、腰椎が前方にずれてしまうすべり症の場合、多裂筋は引っ張られて本来の働きができなくなります。こうしたトラブルを防ぐには、背中全体、そして体幹全体をバランスよくケアすることが重要です。
多裂筋を鍛えるには?
多裂筋を直接鍛えることは難しいものの、体幹トレーニング(コアトレーニング)やインナーマッスルを意識したトレーニングを行うことで、間接的に強化することが可能です。
代表的な方法としては、
- プランク
- ドローイン(お腹をへこませる呼吸法)
- ピラティスやヨガの体幹系ポーズ
などがあります。
これらのトレーニングを続けることで、多裂筋を含む深層筋が活性化し、腰痛の予防や姿勢の改善に大きく貢献します。
最後に:主役ではないけれど、大切な存在
多裂筋は、筋トレやスポーツの現場でもあまり「主役」になることはありません。しかし、私たちが毎日自然に立ち、歩き、動けるのは、この小さな筋肉が陰で支えてくれているからこそです。
派手なパフォーマンスはしませんが、縁の下で常に体の安定を守ってくれている多裂筋。だからこそ、全体的な体幹ケアを通じてしっかりといたわり、維持していくことが大切なのです。
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