2025/11/08
ACL(前十字靭帯)断裂からの復帰:成功へのカギは「術前リハビリ」と「焦らない復帰」にある!
スポーツ選手、特に成長期にある中高生に多い前十字靭帯(ACL)断裂。激しい運動中の受傷は、選手自身はもちろん、指導者や保護者にとっても大きな不安と混乱をもたらします。
「手術はいつ?」「競技復帰はいつできるの?」
一般的に、ACL再建手術後の競技復帰には約9ヶ月という長い期間が必要とされています。しかし、この期間を短縮し、かつ再断裂のリスクを最小限に抑えるためには、実は手術前から復帰後までの一貫したプログラムが不可欠です。本記事では、ACL断裂からの確実な復帰を目指す上で、特に重要となるポイントを解説します。
成長期特有の課題:手術のタイミング
ACL断裂の患者さんで圧倒的に多いのは、中学・高校生といった成長期にある世代です。しかし、成長が続いている間は、骨端線への影響を考慮し、すぐに手術ができないケースがあります。手術を終えるまで待機する間も、今まであった筋力はどんどん低下してしまいます。
ここで非常に重要になってくるのが、次のステップです。
復帰の命運を分ける「術前リハビリ」の重要性
手術までの待機期間や、手術日が決まってからの期間において、「何もしない」という選択は、その後の復帰を遠ざけることにつながります。
筋力低下を防げ!
受傷後、痛みや体重をかけられないことから、今まであった筋力は驚くほどのスピードで落ちていきます。前述したように、ACLだけでなく膝周りの筋肉は、膝の安定性を支える非常に大切な要素です。この筋肉が落ち切った状態で手術を迎えると、術後のリハビリはゼロからのスタートとなり、元の筋力を取り戻すのに約9ヶ月かかると言われています。
早期復帰への道
一方、手術前にしっかりと筋力を維持できた選手は、7〜8ヶ月での競技復帰も視野に入ってきます。特に学生アスリートにとって、この1〜2ヶ月の差は、大事な大会への出場可否に直結する大きな違いです。
しかし、痛みがある状態で、走ることもスクワットもできない中で、膝に負担をかけずに筋トレを行うのは、プロの指導がないとほぼ不可能です。理想的には、レッドコードなどの専門機器を使い、膝に負担がかからない姿勢でトレーニングを行う「術前リハビリ」の導入が不可欠となります。
術後リハビリ:焦りは禁物!再断裂リスクの壁
手術が無事に終わり、いよいよ術後リハビリが始まります。
体重負荷のフェーズ
手術直後は患部に体重をかけられず、足の筋肉はまた落ちていきます。約1ヶ月〜1ヶ月半かけて、徐々に全荷重(フルウェイト)が可能になりますが、この間も膝に負担をかけない形でトレーニングを継続します。
約3〜5ヶ月頃から、軽いジョギングやスクワット、階段昇降などができるようになり、約6ヶ月で本格的なジョギングやウェイトトレーニングが可能になります。この時点で、日常生活には全く問題がないレベルに回復します。
危険な落とし穴「2ヶ月〜6ヶ月」
しかし、ここで選手が「もう治った」と勘違いをしてしまうのが、最も危険な時期です。手術後、痛みは1ヶ月ほどで消え、2ヶ月頃には歩行もできるようになるため、「なんとなくできそう」と感じてしまいます。
しかし、統計的に見ると、手術後2ヶ月から6ヶ月の間に再断裂を起こすケースが最も多く、その割合は約3割にも上ると言われています。
競技復帰の目安は「左右差の解消」
競技復帰(約9ヶ月)の判断基準となるのは、患側と健側の足の太さがほぼ一緒になることです。
切っていない方の足は、日常的に患側をかばって使っているため、筋力がさらにアップしていることが多く、それに追いつけないうちは「まだ膝周りが弱い」というサインです。この左右差があるうちに焦って競技復帰をすると、再断裂という最悪の事態を招きかねません。
まとめ:復帰への最短距離は「着実なリハビリ」
ACL断裂からの復帰に「最短距離」はありません。「急がば回れ」という言葉が示す通り、確実に、順序立ててプログラムをこなしていくことが、選手を早期かつ安全に競技に戻す唯一の方法です。
「術前リハビリで筋力を落とさない」「術後は痛みが消えても焦らずプログラムをこなす」
この2点が、ACL断裂という大きな試練を乗り越え、より強くフィールドへ戻るための、揺るぎないカギとなります。
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